世界が認めるグルメシティ ガズィアンテップ
- 世界が認めるグルメシティ ガズィアンテップ
ガズィアンテップはトルコのアナトリア地方の最南端に位置する人口189万人都市。シリアとの国境に近い商工業都市。
昔はAyintap(アインタップ)と呼ばれていて、シルクロードの西端に位置し、交通の要所として栄えていた。第一次世界大戦後、町を占領したフランス軍に勇敢に抵抗した住民にガズィ(戦士)の称号が贈られ、ガズィアンテップとなった。(通称はアンテップ)
鉄器時代から美食が文化的アイデンティティだったとか。すごいな。
今でも美食が地域経済の主要な原動力であり続けている。
活動人口の60%がこのセクターで雇用されており、企業の49%が主に香辛料、シリアル、ドライフルーツなどの食品関係をビジネスにしている。
ガズィアンテップ料理は2015年にユネスコの「創造都市ネットワーク」に美食のカテゴリーで掲載され、世界でもっとも有名な料理のひとつとして世界的に認められた。
Gaziantep | Creative Cities Network
世界では一般的に「日本料理」「韓国料理」「トルコ料理」のように、国名で料理がジャンル分けされて呼ばれているけど、ガズィアンテップ料理は都市名で呼ばれている。
それはトルコ料理の中でもガズィアンテップ料理に独特の特徴があることを示唆している。
ガズィアンテップではSDGs活動の１つとして、ピスタチオの殻を利用した再生可能エネルギーの生産を１つの目標に掲げているらしい。
さすがピスタチオの生産＆消費が活発なガズィアンテップだ。
地域の特色が出ていて面白い。
ガズィアンテップ料理は各地の料理の融合
中央アジア料理、メソポタミアン料理、地中海料理を融合したガズィアンテップ料理。
肉、トマト/胡椒ペースト、特別なスパイス、シリアル、乾燥製品を使用しているのが特徴。
古代シルクロードの最西端にあるガズィアンテップでは、各地から受け継いだ様々な郷土料理が存在する。
その料理の数はなんと500種類！
500種類も紹介するわけにはいかないので、おすすめをピックアップして紹介したいと思う。
１．オスマン帝国時代から続く歴史的な味 Beyran（ベイラン）
ベイランはガズィアンテップの郷土料理のひとつ。
オスマン帝国時代からある非常に古い味。
シャンクミート(※)、ライス、スパイス、たっぷりのニンニクで作られているとっても美味しいスープ！
12時間も煮込むらしい！！手間暇かかってる～
骨から外した肉を細かく裂くのも大変なのだそうだ。
※シャンクミート＝ラムのすね肉。
色んな効能があると言われていて、冬の病気予防のために食べられたり、専門家は感染症の感染後にベイランを食べるよう奨めていたりする。
材料を見ると確かに身体に良さそう。
以下、効果があると言われている説を羅列してみた。 万能感ある。
・心臓病、血管閉塞、呼吸器系の病気予防
・新陳代謝を促進
・体重管理を助ける
・免疫システムを強化
・豊富なタンパク質とビタミン成分に治癒効果あり
新型コロナの流行によって、現在記録的な売り上げを上げているらしい！
▲身体が温まりそう！これは辛いバージョン。辛くないのもある。
見るからに食べたらポカポカしそうなこの料理、冬になると需要が高まってレストランで販売が開始される。
(家でも作れる！)
２．ゆでたヨーグルトを使ったお袋の味 Yuvalama（ユワラマ）
ガズィアンテップは、ゆでたヨーグルトを料理に使うトルコで唯一の場所かもしれない。
ユワラマはガズィアンテップのおふくろの味的存在。
見た目はスープっぽいけど、スープではなくメインディッシュとされている。
アンテップ文化で重要な役割を果たすこの料理は、イード(※)を楽しむ必需品の１つ。
ちなみにイード＝Eidは、イスラム教最大の祝祭で、ブルーモスクでもこんな感じでお祝いが表現される。
イードの前に、全ての家でご近所さんの助けを借りて準備される料理。挽き肉・子羊・叩いたお米をミックスして、小さな小さなボールに成型してヨーグルトスープに入れる。
ボールがモチモチで、ヨーグルトも濃厚で美味しい。
その他の材料は、ひよこ豆、バター、玉ねぎ、ヨーグルト、塩、黒コショウ、卵、乾燥ミント、牛乳など。
３．こちらもゆでたヨーグルトを使うメインディッシュ Siveydiz（シヴェイディス）
ユヴァラマに似ているこの料理は、ガズィアンテップ独自の料理。
ユヴァラマ同様にスープではなくメインディッシュの位置づけ。
ガズィアンテップには季節ごとの料理があり、シヴェイディスもその１つ。
新鮮なニンニクの芽、子羊肉、ヨーグルト、ひよこ豆、ペパーミント、バターなどで作られている。
レシピによって結構見た目が違う。
▽メインディッシュっぽさが増したレシピ
Şiveydiz Tarifi: Şiveydiz Nasıl Yapılır? | Lezzet
４．世界最高のピスタチオを使ったBaklava（バクラヴァ）
現在ガズィアンテップとして知られている古代アナトリアの都市アンテップは、世界最高のピスタチオとアンテップバクラヴァの本拠地として有名な美食の都市。
ガズィアンテップ＝バクラヴァというほど同一視されている。
プレーンバター、アンテップピスタチオ、そして薄い40層の生地で作られたバクラヴァはガズィアンテップ独自の味。
～バクラヴァの歴史～
バクラヴァの歴史は、古くはアッシリア人にまで遡ると言われている。
アッシリア人は２つの生地の間にドライフルーツを振りかけて、オーブンで焼いていた。
ちなみにトルコ以外でも、特に中東、バルカン地方でバクラヴァに類する食べ物を見つけることができる。多くの歴史家によると、２つの生地の間に材料を入れてオーブンで焼いた物はトルコ料理である。
伝統的には、ユヴァラマ同様に、イード・アル・フィトルのために準備されていたけど、今はトルコ中でいつでもどこでも食べられる。
ガズィアンテップの街中には500軒以上のバクラヴァベーカリーがある。
特に真夏から9月までのピスタチオ収穫の時期には、バクラヴァぴったりサイズのエメラルド色のピスタチオを楽しむことができる。
Antep Fıstıklı Baklava - Resimli Oktay Usta Yemek Tarifleri Yemek Tarifi
あぁ、美味しそう・・・。
全国展開しているバクラヴァの代名詞的存在のお店
GÜLLÜOĞLU BAKLAVA EFKAN GÜLLÜ（ここ以外にも何店舗もある）
所在地： Değirmiçem, Gazi Muhtar Paşa Blv. No:29/B, 27090 Şehitkamil/Gaziantep, トルコ
電話： +90 342 323 05 55
営業時間：7:00～23:00（日曜日だけ8:00～23:00）
ウェブサイト Güllüoğlu Baklava Online Satış Sitesi
■イスタンブールの店舗には私たちも行ったことがある。カイマク入りのバクラヴァが最高。
▽こちらからチェック
ガズィアンテップで絶対行くべき名店２店舗
１．İmam Çağdaş Kebap ve Baklava Salonu(イマーム・チャダーシュ)
所在地：Şekeroğlu Mah, Uzun Çarşı, Hamdi Kutlar Cd. D:No:49, 34200 Şahinbey/Gaziantep, トルコ
電話：+903422207080
営業時間：7:00～22:00
ウェブサイト İmam Çağdaş | Baklava
２．Kocak Baklava(コジャック バクラヴァ）
所在地：Budak, Ali Fuat Cebesoy Bulv Ş, Şht. M. Engin Özdinç Sk. No:3, 27500 Şehitkamil/Gaziantep, トルコ
電話：+903423210520
営業時間：毎日 7時00分～22時00分
ウェブサイト Koçak Baklava
高級店ながら、かなりの高評価のお店。
▲これが２kgぐらいで423トルコリラ(6000円超)
7~8個(0.5kg)で85トルコリラ(1000円ちょっと）確かにトルコでは高級店かも。
ただ日本で同じものを作ったら、もっと高いと思う。
ピスタチオぎっしり。是非試してみて。
５．デザートにも朝食にも！濃厚なクリームがたまらないKatmer（カトメル）
30 Adet Dondurulmuş Antep Katmeri | Toptan Künefe | Şoklanmış Künefe
ガズィアンテップの特産品であるカトメルは、甘いborek(トルコ発祥のパイに似た料理)の一種。
ジューシーさとサクサク感を同時に味わえるこの料理は、ダイエット中は間違いなく我慢した方が良い。(もしくは覚悟を決めて食べよう！）
イスタンブールなどではデザートとして食べられることが多いけど、ガズィアンテップでは、ほとんどの人が朝食に食べる。
ガズィアンテップでは早朝から正午までの朝食の時間帯にカトメルを提供するパン屋やカフェがある。
～作り方～
小麦粉、塩、水を紙ぐらい薄い生地にして、砕いたピスタチオ、砂糖、カイマクをたくさん乗せてそれを生地で包んで熱いオーブンで焼く。
これだけでも高カロリーっぽいのだけど、実は生地は薄くする前に大量の油に1時間浸されていて、さらに包んだ後もギーや油が上から塗られるのだ。
カイマクとピスタチオの油が溶けた砂糖と混ざり合って独特の風味が生まれる。
カイマク大好きなので、想像するだけでよだれもの。
～カトメルの歴史～
過去にさかのぼると、14世紀にアナトリアで作られて(11世紀には作られていたという説もある)17世紀までにはイスタンブールでも多く見られるようになったとか。
伝統的な食べ物でもあり、結婚が一生続くものであるように、と新婚夫婦が結婚初日に食べる食事でもあるらしい！
▲油でテカテカ。チャイと一緒に食べてみてほしい。
現在はトルコの全ての地域で独自の発展をとげている。
たとえばコンヤではタヒニ(ゴマペーストみたいなの)とフルーツシロップ(ペクミズ）がトッピングされるし、アフィヨン州ではケシの実のペーストがトッピングされる。
コンヤでカトメル食べ損ねた。
次に行ったらカトメル食べよう。タヒニ入りも美味しそう。
カロリーは美味しいのだ。
６．季節ごとのKebab（ケバブ）トリュフケバブも！
ガズィアンテップでは、1年を通して食べられるケバブと季節的なケバブがある。
例えば…
春：トリュフ(keme)ケバブ
夏：ビレジク(Birecik)産のナスケバブ、様々な果物や野菜のケバブ
冬：乾燥オニオンケバブ
ビレジクはガズィアンテップの街から東に60kmほど行った場所。
トルコのナスは日本で見るよりも真っすぐで、しもぶくれていない。ビジレク茄子のケバブはガズィアンテップ独自の味。
▲料理名はPatlicanli Kebap(パトゥルジャンル・ケバブ）
茄子ケバブの食べ方
イスタンブールで食べた茄子ケバブめちゃくちゃ美味しかった！
普通に一口サイズに切り分けて食べていたら店員さんが正しい食べ方を教えてくれた。
知らずに間違った食べ方をしている時は見た目通りの味だったんだけど、１段２段どころではなく、１０段階くらい美味しさがアップした。
輪切りのナスの間にミンチ肉が挟まっている状態。
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刻む刻む・・・ ナスの皮は取り除いて、中の柔らかい部分だけにしていく。甘唐辛子やトマトも同様に刻まれる。
刻んだナス、甘唐辛子、羊のミンチ、玉ねぎ、パセリ、トマトを薄いユフカで巻いて食べる。
ユフカ＝Yufka＝小麦粉で作った薄い生地
食感も味もしっかり混ざり合って最高に美味しい。
トルコへ行ったらぜひとも食べてみてほしい。
７．ラムと茄子とヨーグルトの完璧なコンビネーション Alinazik Kebab
トルコ人がみんな愛すると言われているAlinazik Kebabは、炭火焼と燻製茄子のピューレのコンビネーションがとても美味しい料理。ヨーグルトと柔らかいラムシチューをトッピングすると、更に完璧な組み合わせに。
トルコの人たちはピラフと野菜のグリルをサイドに添える。
Alinazik Kebabの名前の由来
名前の由来は複数の説がある。
１つは、16世紀のオスマン帝国時代にさかのぼる。トルコ語のEli nazikが変化してAli nazikになったという説。
セリム１世(1512-1520)がアンテプ(現在のガズィアンテップ)の街を旅をした時のこと、地元の珍味である美味しい茄子とヨーグルトを混ぜたものとラムのグリルの料理で迎えられた。
セリム１世はその料理を凄く気に入って、「誰のEli nazik(優しい手)がこの料理を作ったのだ？」と尋ねた。このEli nazikがAli nazikに変化したと言われている。
Eli(手) Nazik(優しい)→ Eli Nazik(優しい手) →Ali nazik
もう１つの説は、古いオスマントルコ語に由来する説。
オスマントルコ語で”Ala”は”美しい”という意味で、”nazik”は”食べ物”という意味。
何世紀も経て、”Ala”が”Ali"に変化して、"Ali nazik"になった。ちなみに”nazik”は現代トルコ語では”polite(礼儀正しい)”という意味なので、”Ali nazik”は”Polite Ali”という意味になる。
Ala（美しい）Nazik（食べ物）→Ali nazik →Polite Ali（礼儀正しいAli）
Alinazikケバブは コンヤで食べたTirit(ティリト)に似てる。ティリト、美味しかったな。また食べたいな。
最後に治安情報
ガズィアンテップは現在外務省海外安全HPで
「レベル２：不要不急の渡航はやめてください」が発出されている。
2015年夏以降，トルコ南東部・東部において，PKKによる軍や警察等の治安当局へのテロ攻撃が頻繁に発生しました。現在，テロ攻撃の件数は減少していますが，依然として以下のようなテロやトルコ治安当局によるPKK掃討作戦が発生しています。
これらの地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに，十分な安全対策をとってください。
ガズィアンテップ県でもシリア国境の付近はレベル４(退避してください)。
●2019年10月9日からシリア北東部において，トルコ軍による軍事作戦「平和の泉」が実施されました。その後，同作戦は停止されていますが，引き続きシリア北東部ではトルコ軍とYPG（クルド人民防衛隊）等クルド系武装組織との散発的な衝突が続いています。シリアとの国境地帯では，テロ，誤爆，流弾等の危害が及ぶ可能性があることから，どのような目的であれこの地域への渡航は止めてください。既に滞在中の方は直ちに退避してください。
もし行く場合はお気をつけて。
どこでも安心して楽しく旅行できるような平和な世界になりますように。
